「老害の人」を読む

老害の人

 

老害の人」内館牧子著 2022年刊  

結論的には後味の悪い本と言わざるを得ない。

以前、著者の「終わった人」という小説を読んだ時と同様の違和感を感じた。同書では、東大卒の銀行マンでありながら会社の保証人になって退職金をフイにしてしまうとか、今ひとつリアルさに欠ける場面があった。そして、故郷に帰って高校時代の同級生とつるむ生活に救いを見つけるという最後も、なんとなく釈然とせず、モヤモヤ感が抜けなかった。

この小説でも、主人公が大切な商談をつぶしてしまう場面などちょっと考えれば非現実的なストーリーが展開され(これは老害というよりボケ老人の所業)、最後は他人に役立つ「サロン」の開設で、一転、生きがいを見出すというありふれた、めでたしストーリー。しかし、モヤモヤ感は残った。

その理由の一つは、本書が高齢者の生き方としてボランティア活動にこそ価値があるような書きぶりであること。そうした決めつけはいかがなものだろうか。高齢者の生き方は多様であって良いはずであり、本書が高齢者及び高齢者予備軍に誤った印象を与えないことを願うものである。