「日本の死角」現代ビジネス編 講談社現代新書 2023年刊

現代日本の抱えている諸問題を総花的かつ簡潔に知る本として本書を手にした。
しかし、防衛問題はおろか経済問題にも言及した論説がなくその点残念な書。
全体に各論とも短くまとめられており、さほど難しい内容でもないので30分ほどもあれば通読できる内容ではある。

本書で一番気になったのは、冒頭の「日本人は集団主義という幻想」という所論。
著者は国際比較で見ても日本は集団主義の国ではないと主張しているが、この所説には実感としても納得できる人が少ないのではないだろうか。


疑問の第一は、著者の言う調査研究も実験研究もいわば真空状態の実験室で行われた研究のように思われ、現実の人間の社会行動を的確に反映しているのか疑問ということ。こういうテストでは同調しない人も、現実の社会では声の大きい人に賛同することはよく見られることであり、さらに利害・出世など様々な思惑が入った場合はどうなんだろう。最近、多く語られる同調圧力や忖度をどう考えたらよいのか。
また、同書「日本の学校からいじめがなくならないシンプルな理由」で展開される初中等教育における制服・髪型など生徒を一律化する学則や運動会・いじめ問題などは、明らかに集団主義を強制する体制ではないのだろうか。